本年は、空き家利用者らに対してインタビューを行うことで、集落空間および居住空間における調査を行った。所有者との関係として「空き家所有者の家財」「住環境の修繕・インフラに関する課題」「空き家所有者の来訪」、地域住民との関係として「近所付き合い」の実態をそれぞれ明らかにした。 具体的には、「空き家所有者の家財」において、住居内に所有者の家財が散在しており、一部は利用者がそのまま使っているものの、多くの使用していない家財のため、利用者が利用可能な空間が狭くなっている。「住環境の修繕・インフラに関する課題」において、インフラ関連の修理費を利用者が負担しおり、これを所有者は当然のことであるという意識があり、利用者は困惑している。「空き家所有者の来訪」において、所有者は断りなく頻繁に所有者宅へ来訪している。これを所有者は当然のことであるという意識があり、利用者は困惑している。また、空き家利用者の「近所付き合い」において、近隣住民と良好な関係を築く場合と、ほとんど付き合いがない場合に二分されるが、良好な関係を築く場合、そのきっかけとして、区長や別の移住者が重要な役割を果たしている。また、近隣住民に頼りにされるきっかけを作ることが、利用者にとって重要であること、などである。 次に、空き家の状況をGISデータベースにのせ、空間的解析を試みた。空き家率が高く、担い手が不足している集落に関して、近隣集落との再編も含めた今後の限界集落の空き家問題を考える場合、空間的な分析のみでは難しく、社会的な要素も考慮に入れた対策が必要である。集落を再編するまでの提案には、空間的、社会的な分析がさらに必要であり、今後の課題として残される。
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