研究概要 |
米国都市におけるリンケージデザインの現代的課題として昨年度抽出した3つの課題すなわち、(1)総合的なオープンスペース計画の策定、(2)グリーン・インフラストラクチャーの計画と整備、(3)都市内大公園の整備に対して、今年度前半はフィラデルフィア市を対象に(2)の調査を、後半はシカゴ市を対象に(1)(2)(3)の調査を行った。フィラデルフィア市の調査は昨年度調査を補完するものであり、水道局が進めている雨水マネジメントの長期計画の内容とその推進策についてヒアリング及び整備箇所の視察調査を行い,グリーンインフラの整備による雨水マネジメントの有効性を確認した。シカゴ市ではグリーンインフラ整備に関わる各種プログラムの情報収集、空地整備の総合計画に関する情報収集、同計画に基づいて多数のコミュニティガーデン整備実績を持つNeighborSpace,Inc.(NS社)へのインタビュー調査を行った。シカゴではオープンスペース計画に基づいて都心など開発市場の強いエリアではオーバーレイゾーニングによって空地を保全しながら都市内大公園のミレニアムパークを整備する一方、インナーシティエリアなど荒廃した近隣に分散する小規模な未利用地はNS社が土地を保有により安定化を図りつつ地元住民等とコミュニティガーデン整備を行うなど、場所性を踏まえた空地の整備手法が有効に機能したことが確認された。またグリーンインフラの計画は空地整備の総合計画の10年近く後から始まっているため、両者は十分に連動したプログラムではないが、建物屋上や路地などオープンスペース計画では対応しきれなかった空間がグリーンインフラ整備の対象になっていることから、前者は後者によって補完される関係にあることがわかった。さらにこれら多様なプログラムを束ねるための全体計画も策定していることがわかった。(1)と(2)を関係づける際の課題について次年度以降調査したい。
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