平成21年度の研究実施計画として、木造伝統建築の部材形状をレーザー計測による点群データから効率的にモデリングする手法の確立を挙げていた。ケーススタディとなる東本願寺阿弥陀堂では湾曲部材が多いため、その形状モデリングを中心に検討を進めた。基本的なモデリングプロセスとしては、部材の点群データを材軸に垂直方向に一定間隔で輪切りにして取り出し、輪切りにされた部材の点群データから断面線(ポリライン)を作成し、そのポリラインをロフト機能で立体化するというプロセスを想定した。まず、部材の点群データを輪切りにする作業はこれまで一箇所づつ実施していたが、作業が煩雑であったため、これを自動化する機能開発を外部企業へ委託開発した。輪切りの間隔や点群の厚みも任意に設定でき、輪切りにすると同時に自動的にポリラインの近似断面線を自動生成する機能が開発できた。この開発機能は概ね良好であり、作業効率を格段に向上させることが可能となった。しかし、近似断面線の自動生成機能は同企業による既開発ものもであり、あまり精度が高くない。したがって、部材の断面形状パターンを類型化し、自動生成機能を各々のパターンに分岐させて生成させる事を検討した。しかし、部材の断面形状は様々で類型化が困難であり、開発者と議論を進める中で、(手作業で断面形状を修正するなど)運用面での対処の方が望ましいであろうとの結論となった。よって、阿弥陀堂の一部の部材を対象としてモデリングを試行し、作業スピードやモデリングデータの精度検証を実施した。一方、阿弥陀堂の改修工事に関わっている設計事務所に対し、点群データの活用に関して説明を実施した。無償のビューアとともにこれまでに得た阿弥陀堂の点群データを提供し、一定期間使用してもらうこととした。効用性や可能性に関する意見を収集する予定であったが、これについてはまだ実施できてない。
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