研究概要 |
近年の少子高齢化の進展や医療技術の進歩などの要因により,医療費・社会保障費が増大している.医療にかかる費用や医師・医療従事者の数をにわかに増加させることはできないことから,限られた人的・金銭的資源を効率的に運用することが望まれている.中でも救急医療では治療を開始するまでの時間が生命に直結する場合もあり,サービスの要請に対し即座に対応することが重要である.限られた予算,人員の制約のもとでは,施設を集約し,多くの資源を集中的に運用することで,個々の施設におけるサービスは効率よく提供することが可能である.その反面,施設数を減らすことにより,施設までの移動に時間がかかり,利用者の負担の増加を招くことになる.本研究では,サービスの効率と利用者の負担とのトレードオフに注目した上で,リソースの適正な配分や医療施設の位置について基本的な数理モデルを構築した. 医療を提供する医師をサーバ,サービスを享受する患者の発生を到着とみなせば,待ち行列の基本的な公式を用いることで,施設を利用できない確率などを求めることができる.この確率を用いて,仮想的な線分状の都市領域における最適な施設の位置を求める計算を行った.その結果,患者の発生が多い場合には都市の中心部に集中的に,そうでない場合には都市全体に分散して施設を配置することが望ましいことが明らかとなった.また,前記の内容を無限に広い一様な領域に拡張した上で,施設の利用確率を近似することで,望ましい施設の密度(及び配置される医師の密度)を計算した.
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