本研究は、バリアフリーを基本に進められてきた福祉のまちづくり計画について、QOL(生活の質)と関連付けた福祉援助・生活環境整備の方策を見出そうとするものである。とりわけ、過疎高齢化に対する農村地域のまちづくりは喫緊の課題であることから、農村地域に居住する高齢者の外出行動と地域住民の関わりを詳細に捉え、併せてWHOQOL26を用いてQOL評価を実施し、両者の結果からQOL向上に資する環境要件の抽出を試みた。 調査地域は宮崎県下において高齢化率と農林業就業率が高い美郷町(42.8%、32.3%)とし、なかでも社会福祉協議会(以下、社協)による住民への働きかけが活発な南郷区を調査対象地区として選定した。調査は同町社協南郷支所の協力により26世帯31名(単身19名、夫婦11名、子世帯同居1名)を訪問し、ヒアリングおよびQOL26のアンケート調査を実施した。 一次分析の結果、農村地域の単身・夫婦暮らしの高齢者にとって外出に伴う人との交流は極めて重要な意義を持つが、交流のための特別な時間は設定せず、日常の用事や地域活動、趣味活動の延長でその時間を獲得していることがうかがえた。また、外出活動の範囲やその頻度は移動手段の獲得状況に強い影響を受け、自身での移動手段を持ちえず、また、家族・親族からの移動援助が得られない者にとっては、活動の範囲や頻度は非常に限定されていることが示唆された。QOL評価については、平均点の高低で3グループに類型できたるこの類型は心理的側面と環境の側面とに関わりがあり、生活に対するポジティブな思考と環境に対する高評価がQOL評価を高めていることが推察できた。 次年度は、外出行動の詳細とQOL評価の関連について分析を進めるとともに、交流の促進が期待できるサロン活動を福祉のまちづくり計画の重要なポイントとして位置づけ、その活動内容によるQOL向上の可能性について検証する。
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