研究概要 |
本研究は、農村高齢者の地域生活とQOL評価とを関係づけて考察することでQOLの維持・向上に資する福祉のまちづくりの方策を見出すことを目的とする。本研究は前年度からの継続研究である。 前年度実施した30名へのヒアリングとQOL評価の結果について、統計解析ソフト等を用いて詳細な分析を行った。その結果、1.安価で自由な移動手段の確保、2.多様な外出機会、3.子ども世帯との定期的な接触がQOLに高評価を与えることを明らかにした。 1と2を踏まえて、徒歩圏内での外出機会となり得るサロン活動について、宮崎県及び市町村社会福祉協議会の担当者8名に対して、現状と課題についてヒアリングを行った。その結果、県内すべての市町村にサロンが存在し、その数は1,227か所にのぼるが、サロンの形態はレクリエーション中心型が多く、サロンで物品を生産販売する生産型はまったくなかった。活動場所は公民館や福祉センターなどで、運営は民生委員や地区の世話人であった。中山間地域におけるサロン活動の問題として、活動場所まで遠く徒歩ではいけない方がいる、活動場所に個人の住宅を借りることもあるが気兼ねして継続できない、仲間内に限定され新しい参加者が入りにくい、運営者が高齢化しているが後継者がいないなどの問題があがった。 生産型サロンは参加の楽しみとともに販売する責任を伴うものであり、社会生活の観点からQOL向上に期待できる活動である。外出の目的に仕事とサロン活動を挙げた21名について詳しいヒアリングとQOL評価を行ったところ、いずれも仕事やサロン活動に参加しない方に比べてQOL評価は高かった。 中山間地域などの農村地域におけるQOL向上に向けた福祉のまちづくりとして、地域の空き家等を活用したサロン活動実施拠点の整備と、活動を運営する住民の育成、地域の特産を活かしたサロンでの生産品から販売までの流通システムのモデル化が今後の課題である。
|