平成21年度は現在進められつつある行政主導型の公営住宅の空住戸を活用した先進事例調査として、兵庫県施策で進められている「高齢者自立支援ひろば事業」のうち、神戸市内の活動開始より1年以上が経過している9箇所を対象とした。公営住宅の空き住戸を活用したものが7箇所、団地敷地内にある集会所を用いたものが2箇所である。集会所を用いた事例は、空き住戸を活用した場合と比較して相違点があるか考察するため調査対象に加えた。調査内容としては、拠点を訪問し、スタッフへのヒアリング調査および拠点の間取り・使われ方調査を実施した。 常駐型の生活支援拠点が住宅団地内に出来た効果として、(1)ルームへ立ち寄る高齢者や見守り対象者が存在し、被支援者から訪ねて来ることで、双方向の関係性が生まれること、(2)常駐により地域内の地縁関係がよく見え、ネットワークから漏れていた人が発見されるなど、地域課題が見えること、(3)敷居が低く気軽に訪れやすい、体力がなくても近いので訪問可能、いつでも行けるなど、住民の安心感に繋がること、が捉えられた。 今後これらの拠点を展開していく上での課題として、(1)高齢者の見守りやコミュニティ支援をきめ細やかに行なうためには、住宅団地の規模や単身高齢者世帯数とルームの配置やスタッフの数のバランスを検討する必要があること(現状では団地規模とスタッフ配置数に対応関係はない)、(2)ルームの活動を継続・発展していくためには、地域人材の参加が不可欠。現状は地域人材が不在のところも多く、人材発掘が必要である。 超高齢社会において地域も巻き込みながら高齢者の自宅での居住継続を支える支援策は国や県などの行政単位での取り組みが始まりつつあり、本調査での知見は今後施策を有効に進めるための効果、課題把握ができたことに意義がある。
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