研究課題/領域番号 |
21760497
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飛ヶ谷 潤一郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30502744)
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キーワード | セバスティアーノ・セルリオ / 建築書 / 古代建築 / イオニア式戸口 / 聖堂ファサード |
研究概要 |
平成23年度の科研費の成果としては、まず〔学会発表〕からみていくと、8月に早稲田大学で行われた日本建築学会大会における「ナポリのパラッツォ・カラーファにおけるイオニア式戸口について」と題する発表が挙げられる。この発表では、セルリオの建築書に描かれたイオニア式戸口の渦巻き装飾は、15世紀後半のナポリにも見られるものであることを示した。なお、渦巻き装飾に類似する波形装飾が聖堂ファサードの三角破風上に用いられた珍しい例として、プーリア地方のアックアヴィーヴァ・デッレ・フォンティ大聖堂があり、「アックアヴィーヴァ・デッレ・フォンティ聖堂ファサードについて」と題する原稿を現在執筆中である。この原稿は、今年9月に名古屋大学で行われる日本建築学会大会で発表する予定である。 次にもうひとつの〔学会発表〕について、日本建築学会西洋建築史小委員会から「建築としての教会堂」と題するシンポジウムでパネリストを依頼されたときの発表「15世紀イタリアの聖堂ファサードと集中式平面との関係について」がある。この発表では、セルリオが影響を受けたブラマンテの聖堂ファサードについて論じたものである。 最後に〔図書〕について、『イタリア文化事典』(共著)の「ローマの盛期ルネサンス建築」を執筆した。この原稿においても前述の学会発表と同様に、セルリオの建築書にはブラマンテやラファエッロの建築が古代建築と同格と見なされて掲載されており、セルリオに大きな影響を与えたことが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災により研究室が被災し、何度も引っ越しをくりかえしたため、図書が整理されていない環境の整っていない状態が長く続き、かつ震災関係の仕事をせざるをえなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が本研究課題の最後の年となるので、セルリオの建築書『第四書』の翻訳は今年度内に完成させるつもりである。次年度も『第四書』以外の残された建築書の研究に取り組む予定で、再び若手研究Bに応募したいと考えている。
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