研究概要 |
【内容】 ・ 調査の時期:平成21年9月(2週間) ・ 調査地:マルセイユ、フィレンツェ 1589年にフェルディナンド1世と結婚したクリスティーナが、フィレンツェに至るため訪問都市における本研究において、本年度は旅の起点となったマルセイユ、終点であるフィレンツェで史料収集を行った。マルセイユ歴史図書館においては16世紀マルセイユで刊行された歴史書、都市図、古地図を収集した。当時のマルセイユの記録を所蔵するエクス・アン・プロバンスのアルボー図書館においては、1589年のクリスティーナの来訪を記す希少史料であるR. Ruffi, Memoiresを入手した。フィレンツェでは、Gualterotti, R.やPavoni, G. Rossi, B.といった1589年の祝祭に関して詳細な記述を残した複数の記録を入手した。 【意義】 ・ マルセイユの史料を分析することによって、1589年当時のマルセイユの政治的、宗教的混乱、クリスティーナの来訪が公的文書に記されていないことが明らかになった。 ・ 1589年当時のマルセイユの古地図、絵図を得たことで、クリスティーナの市内への入市経路、出帆までの流れの分析が可能となった。 ・ 1589年のフィレンツェ側が出版した史料から、1589年の婚礼に関するフィレンツェ側の政治的意向、全体計画を掌握することが可能となった。 【重要性】 今年度の調査は、トスカーナ大公国外のフランス側の都市において、クリスティーナの婚礼祝典の捉えられ方を明らかにするために基盤となる調査であった。当時のマルセイユの政治的背景から、クリスティーナの来訪が公文書に記録されていなかった点は注目すべきであり、トスカーナ側と、フランス側、そしてマルセイユ側が、各々どのような立場でこの婚礼を捉えていたかを再確認することができた。
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