研究課題/領域番号 |
21760499
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
赤松 加寿江 日本女子大学, 家政学部, 学術研究員 (10532872)
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キーワード | 都市史 / イタリア / 祝祭 / ルネサンス / アルノ川流域 / フィレンツェ / ヴィラ |
研究概要 |
【具体的内容】 本研究は、トスカーナ大公国における地方都市の整備および領域支配を婚礼巡幸の面から明らかにすることを目的にしている。対象としているのは1589年のフェルディナンド1世との婚礼に際し、新婦クリスティーナがフランスからフィレンツェに至るまでに巡幸した都市である。今年度の調査都市は1)カッシーナ、2)ポンテデラ、3)サン・ロマーノ、4)エンポリ、5)アンブロジャーナ、6)ポッジョである。これら6つの小都市は、内陸フィレンツェと海港都市ピサを結ぶアルノ川流域に立地しており、現地資料からも16世紀以降のアルノ川流域における治水、物流、水車施設などを確認することができた。なかでも、新婦が宿泊した2つのヴィラのうち1つであるヴィラ・アンブロジャーナの資料、現地調査を進めることができた。 【意義】 ピサからフィレンツェに至る各都市を線的にたどることによって、アルノ川流域の都市構造や水利を把握することができ、トスカーナの領域支配におけるアルノ川流域都市の立地の重要性を確認することができた。したがってトスカーナ大公国の領域支配の拠点整備について、祝祭の巡幸路という新たな視点から浮かび上がらせることができた。 【重要性】 大公国の安定を推し進めたフェルディナンド1世の治世下、トスカーナ大公国の領域支配はアルノ川流域を中心に広範囲な地域整備を行ったことが多くの研究者から指摘されている。今回の調査ではヴィラ・アンブロジャーナの希少な資料を入手することができたことによって、フェルディナンドの領域支配が、季節ごとの宮廷移動や祝祭の巡幸を恒例化することによって徹底され、そのためにヴィラや小都市が彼の領域支配を支える拠点として機能していた明らかな実態を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに調査を進めているが、都市の規模が予定よりも小規模な都市については都市整備分析については広範なものとなっている。資料においては、希少性の高いテキストを獲得することができている一方、図像資料については、それほど残存していないため予想よりは獲得できていない。調査および資料をもとにした分析については、ほぼ計画とおりに進められている。さらに、ヴィラ・アンブロジャーナの調査を進められたことによって、婚礼巡幸と領域支配の関係性を浮かび上がらせるという本研究の目的に、ヴィラという要素を加味して今後の分析を進める新たな展開を迎えている。
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今後の研究の推進方策 |
課題の推進については、概ね問題はない。しかし、図像資料の残存率が低く入手が困難であることから、当初の計画で予定していたように当時の都市整備状況を再現することよりも、可能な範囲の図像を用い、都市やアルノ流域の地理的、歴史的、構造的分析を行うものとする。これによっても、十分当時の領域支配と祝祭巡幸の関係を明らかにすることができると考えている。
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