研究課題
本研究はトスカーナ大公国における地方都市の整備および領域支配を婚礼巡幸の面から明らかにすることを目的に実施された。対象としているのは1589年のフェルディナンド1世との婚礼に際し、新婦クリスティーナがフランスからフィレンツェに至るまでに巡幸した都市領域である。フランスからトスカーナ大公妃となったクリスティーナに関する資料をフランス側、イタリア側から調査することによって、16世紀末トスカーナ大公国の国際状況を明らかにすることができた。特に宗教戦争のさなかにあったマルセイユからフィレンツェに至る移動手段、環境を明らかにすることで、境界領域における支配や管理状況と領域支配の水際のありようを明らかにすることができた。さらにクリスティーナの婚礼巡幸にはじまるフェルディナンド1世治世下の土木事業整備について、カピターニ・ディ・パルテの資料を通じて実態を浮かび上がらせることができた。都市インフラの土木事業の充実によってトスカーナ大公国の領域支配が徹底され、領域空間が変容していったことについて、婚礼祝祭という新たな視点から浮かび上がらせることができた。大公国の安定を推し進めたフェルディナンド1世の治世下、トスカーナ大公国の領域支配はアルノ川流域を中心に広範囲な地域整備を行ったことが歴史学、経済史学の研究者から指摘されている。今回の調査ではフェルディナンド大公妃であるクリスティーナに関する資料、およびヴィラの改修、水路・陸路の建設に関わったカピターニ・ディ・パルテの資料を通じて、領域支配の整備の実態を明らかにすることができた。トスカーナ大公国の領域支配について土木事業の絵図、移動に関する資料といった空間的観点からその実像を明らかにしたことは、建築史、都市史的観点から領域支配を読み解く本研究独自の重要性である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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