研究概要 |
研究期間の最終年度となる本年度においては,これまでの調査,分析の総括を主たる課題として,下記のとおりの研究を行った。 まず,建築家による思想の構造的解明を試みる本研究において不可欠といえる,建築家が参照,制作した諸作品についての調査として,本年度は以下の作品を訪問,調査した(2011.3.8~3.21),[ドイツ]ル・コルビュジエ,ミース・ファン・デル・ローエ,J.J.P.アウト他によるワイセンホフ・ジードルンク(ワイセンホフ),ミース・ファン・デルローエ設計によるランゲ邸,エスタース邸(クレフェルド)および,新国立ギャラリー(ベルリン),バルタザール・ノイマン設計によるフィアツェーン・ハイリゲン(バンベルグ郊外),ファン・アイク設計のシュメーラ・ハウス(デュッセルドルフ)他。 つぎに,上記の調査によって得られた知見に基づき,ファン・アイクの思想研究として,1960年代における「時間」概念の萌芽と展開に関する考察に一定の見通しを得た。この成果については一篇の査読論文として投稿し,採用が決定している。また,1980年代における晩年のファン・アイクが強い関心をもったギリシア人建築家,ディミトリウス・ピキオニスについては,前年度に訪れたデルフト工科大学図書館やオランダ建築家協会アーカイブでの調査をとおして基礎的資料が得られていたが,こうしたピキオニスの思想が相関すると考えられるファン・アイクの後期思索における鍵概念「開け」「光」「色」についての学術講演を行ったほか,両建築家の関わり合いそのものについては,次年度での学術講演に向けての梗概の提出を完了している。 さらに,上述のような作品と思想の両側面からの研究によって得られた成果の総括として,その一部を招待講演において公表し,来聴者との意見交換等を行った。
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