標記課題に対し、新上五島町における鉄川与助大工道具の調査を主とし、弟子への聞取りや資料の調査分析を行った。結果、鉄川の大工道具は17点現存し、手作りで、教会建設に取り組んだ創意工夫が確認できた。道具には1910年頃のManufrance社製の鉋や西欧技術の木製刃押えの鉋が含まれ、仏人神父からの建築技術の受容を示し、貴重な存在である。一方の弟子の道具は全くの伝統的日本大工道具で、道具の技術伝達は行われなかった。道具や組織から鉄川の教会堂建築は高い独自性をもつことが判明し、世界遺産候補「長崎の教会建築」の保存継承の端緒をつかむことができた。
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