最終年度である今年度は、未調査であった中国北京周辺の遼代建築の現地調査を実施し、日中比較の観点から古代建築の構造的特質をまとめるとともに、これまでの研究成果のとりまとめをおこなった。 中国調査では、河北省正定県の隆興寺をはじめとする古代建築群と、天津市薊県の独楽寺を、天津大学講師で遼代建築研究を進めている丁垚氏とともに現地調査した。日中両国における現在の研究進捗状況につき情報交換をおこない、日中比較のための視点の拡大と議論の深化を心がけた。この調査を踏まえて、特に古代建築の小屋組、組物、尾垂木の関係について構造的観点からの整理をおこない、尾垂木の構造的機能に関する日中比較論を平成25年度日本建築学会大会にて発表する予定である。また、古代建築における重層構造と楼造における構造システムの問題についても重要な示唆を得ることができ、古代建築における重層の問題につき、これまで門に限って論じてきた内容を敷衍し、論考にまとめる予定である。本研究により、古代建築の構造的観点からの再解釈につき、核をなす問題の解決の糸口を得たため、本研究終了後も、東京大学藤井恵介氏を研究代表者とする科研費基盤研究(A)の研究分担者として、引き続き古代建築の技術に関する研究を継続していく予定である。 また、飛鳥・奈良時代を遡る縄文、弥生、古墳時代における建築技術についても、研究を継続している。既往の研究成果を元に、先史時代の構造原理に関する論考をまとめる作業を進めている。
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