本研究は、東アジアの視野に立ち、歴史的木造建築の構造システム論の創成へ向け、東アジア各国・各地域における木造建築について、技術的・空間的側面から総合的に比較する研究構想の一環として実施するものである。中世日本と同時代の中国における木造建築について、その基礎的な情報および論考を集積・把握し、その架構システムについて比較検討をおこなうことで、研究の全体構想の根幹を構築することを目的とする。 本研究の2年度目となる平成22年度では、前年度に引き続き基礎資料となる実測図面の収集につとめた。特に本年度は日本の図面について、重点的な収集をおこなうようにつとめた。具体的には、修理工事報告書および文化庁所蔵実測図などから抽出した。その上で、平面図および断面図を整理することで、その架構についての類型的な把握を試みた。 中国の建築については、各種論文や書籍から図面を収集した。また、唐~遼・金代にかけての遺構が集中する山西省北・中部の古建築(南禅寺大殿、仏光寺東大殿、仏宮寺釈迦塔、鎮国寺万仏殿など)を現地調査し、収集した図面との整合性の確認をおこなった。また現地の研究者と意見交換をおこなった。 次年度以降も、収集した資料に加えて、現地調査を重ねることで情報を補いたい。また中国の建築の架構法について類型的な把握を通して、日本と中国の比較をおこなうことで、本研究の目的である木造建築の架構システム論の基礎を築きたい。
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