本研究は、東アジアの視野に立ち、歴史的木造建築の構造システム論の創成へ向け、東アジア各国・各地域における木造建築について、技術的・空間的側面から総合的に比較する研究構想の一環として実施するものである。中世日本と同時代の中国における木造建築について、その基礎的な情報および論考を集積・把握し、その架構システムについて比較検討をおこなうことで、研究の全体構想の根幹を構築することを目的とする。 4ケ年計画の3年目となる2011年度は、東日本大震災にともなう年度当初の予算執行計画立案の困難さから、中国における現地調査を実施することができなかった。そのため中国の古代建築に関しては、文献の収集および、図面の整理を中心におこなうこととし、現地調査は日本の中世遺構について、重点的におこなった。 また日中韓建築遺産保護国際学術会議において、木造塔の構造の変遷について口頭発表をおこない、中国・韓国の研究者と東アジアの木造建築に関して意見交換をおこなった。 なお2012年度からは、本研究課題で得た問題意識に基づき、「中世日本と東アジアにおける木造建築の架構システムに関する比較研究」(基盤研究(C))として研究を発展的に継続する。これまでに収集した資料に加えて、現地調査を重ねることで情報を補いたい。また中国の建築の架構法について類型的な把握を通して、日本と中国の比較をおこなうことで、本研究の目的である木造建築の架構システム論の基礎を築きたい。
|