研究概要 |
本研究の目的は,透過電子顕微鏡(TEM)に付随する電子線エネルギー損失分光(EELS)に電子線のチャネリング効果を利用した,局所領域でのサイト選択的電子状態解析を確立し,複数の機能サイトをもっ磁性材料解析に応用することである.A.測定シミュレーションの高精度化B.測定のデジタル自動制御C磁性多層薄膜の設計指針の獲得の3点の連携より,障害となる問題点を克服し,本解析法の有用性を示す. 平成21年度はA.に関して、チャネリングEELSのシミュレーションの拡張、Bに関して、電子ビームロッキングEELS測定のスクリプト作成、Cに関して実用材料分析の手始め、をそれぞれ課題事項として掲げた。チャネリングEELSのシミュレーションはスウェーデン国ウプッサラ大のJan Rusz博士と共同で多波での動力学回折とEELS非弾性散乱を組み込んだ計算プログラムを開発し、実験結果と比較した。電子ビームロッキングEELS測定では、日本電子製JEM-2100で動作するPC制御スクリプトを作成した。これらは良好に動作し、スピントロニクス材料の一例であるスピネルフェライトNiFe_2O_4中のFeのd軌道電子の配置状態をサイトごとに分析し、現在論文を投稿中である。また、チャネリングEELS測定のシミュレーションよりEELS検出器位置敏感な測定法の可能性が見出され、試行実験において結晶サイトによるEELSスペクトル形状が検出器位置に依存して変調するのが確認された。
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