熱電材料の性能向上において、今最も注目されていることは、材料のナノ構造化(低次元化)である。材料をナノ構造化することで生じる量子サイズ効果により、ゼーベック係数の増大と格子熱伝導率の低減が同時に起こり、熱電性能が大幅に向上することが予測されている。本研究では、我々のグループが独自に発見した「材料中に自然にナノ構造が生じるGa_2Te_3」について、そのナノ構造と熱電特性の相関を詳細に研究することで、Ga_2Te_3をベースとした物質群で高性能バルク熱電材料を開発することを目的とした。 種々の条件下で作製したGa_2Te_3関連物質について、電気伝導率、ゼーベック係数、ホール係数、熱伝導率といった熱電材料として重要な諸物性を測定した。得られた結果をもとに熱電性能指数ZTを算出した。また、上記熱電特性に加えて、音速やデバイ温度といった格子熱伝導率と密接に関連する各種物性を測定した。Ga_2Te_3関連物質のナノ構造(原子スケールでの空孔の分布状態)と、熱的・電気的な輸送特性の相関を詳細に研究した。その結果、Ga_2Te_3において観察された極端に低い熱伝導率の起源は、材料中に存在する二次元空孔面によるフォノン散乱であることを明らかにした。また、Ga_2Te_3にNaやTlといった元素をドーピングすることで、試料のキャリア濃度を熱電材料として適切な値(およそ10^<19>cm^<-3>)に調整することを試みた。その結果、Ga_2Te_3においては、ドーピング等によるキャリア濃度調整はきわめて困難であることがわかった。
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