研究概要 |
Gbit級磁気ランダムアクセスメモリに搭載可能な新規情報入力方式である,電圧誘起磁化反転の実現を目指して,α-Cr_2O_3薄膜を用いた磁性超薄膜の界面磁気異方性の制御について検討した.平成21年度は,α-Cr_2O_3薄膜の表面平坦性の改善,α-Cr_2O_3薄膜に起因する界面磁気異方性による磁化方向の制御,電圧誘起磁化反転計測のための新規計測手法の開発について検討した. (1) α-Cr_2O_3薄膜の作製方法として,従来の800℃での酸化とは異なり,400℃の低温で酸化処理を行うことで,表面平坦性の改善に成功した.また,低温酸化による結晶性の劣化を抑制することに成功した. (2) 表面平坦化されたα-Cr_2O_3薄膜を用いることで,α-Cr_2O_3薄膜上に積層させた磁性超薄膜の界面磁気異方性の方位を膜面垂直方向とすることに成功し,高密度磁気記録に適した膜面垂直方向への交換磁気異方性の発現に成功した.また,磁性超薄膜の実効的な磁気異方性に対するα-Cr_2O_3薄膜の影響について検討した結果,α-Cr_2O_3薄膜の反強磁性秩序の消失により,膜面垂直方向の磁気異方性が消失すること,膜面垂直方向の磁気異方性の消失により,磁性超薄膜の磁化の熱安定性が劣化することを明らかにした.この結果は,α-Cr_2O_3薄膜により磁化方向の制御のみならず,磁性超薄膜の磁化の熱安定性も改善出来ることを示している. (3) 電圧誘起磁化反転計測のためには,試料の振動・移動を伴わない,高感度磁化検出方法が必要である.磁気光学カー効果測定装置を独自に改良することで,電圧誘起磁化反転を直接的に検出できる手法を構築した.
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