研究概要 |
MRAMなど次世代の高性能磁気デバイスの基盤技術の開発を目指して,反強磁性a-Cr_2O_3薄膜を作製と,その磁性について検討した.具体的には,MRAMなどの磁気デバイスで用いられている交換バイアスを,低消費電力・小型化に有利となる,膜面垂直方向とした垂直交換バイアスの発現とその高強度化について検討した. 具体的成果として,高い垂直交換バイアスを発現させるには,α-Cr_2O_3薄膜と強磁性薄膜の薄膜面内での原子配列を類似させることが必要であること,反強磁性α-Cr_2O_3薄膜と強磁性薄膜の間に,1原子層の非磁性層を挿入することで,強磁性層の結晶成長を制御できることを見出した.これは,高性能MRAMを構成する薄膜設計の基本指針となる. また,反応性スパッタリング法を用いてα-Cr_2O_3薄膜を作製することにより,これまでに報告されている垂直交換バイアスの中で,最も高い値(約0.3erg/cm^2)を実現することに成功した. 本研究で得られた成果は,Ir,Pdなどの希少金属を用いない反強磁性体であるα-Cr_2O_3薄膜が,MRAMなどの低消費電力磁気デバイスの新規構成材料となり得ることを意味している.また,本研究で開発したα-Cr_2O_3薄膜は,従来の磁界による磁性制御ではなく,電界による磁性制御が可能であることから,電圧駆動MRAMなど,超低消費電力・高速・不揮発・大容量な次世代高性能磁気デバイスへの基盤材料となり得る.
|