研究概要 |
H22年度は、母相中の塑性変形が高強度鋼に用いられる鉄鋼材料のマルテンサイト組織及ぼす影響を解明するために、マルテンサイト変態前に導入された母相中の歪に注目し,変態前加工(オースフォームが)マルテンサイト組織に及ぼす影響を調べた.更に,昨年構築したマルテンサイト方位からの母相オーステナイト逆計算法を用いて,オースフォームによるバリアント選択則を定量的に解明した.実験には,Fe-3Ni-1.5Mn-0.15C合金を用いて,973Kで10~50%の熱間一軸圧縮変形を施し,ガス冷却することでオースフォームドマルテンサイトを得た. (1)オースフォームを施すことで,マルテンサイトブロックは微細化するが,圧縮軸に対しておよそ45度の角度をもったバリアントが優先的に生成する結果,パケットは逆に発達する.一方,個々のマルテンサイトラスの幅は変態前加工によってほとんど変わらない. (2)母相オーステナイトの方位と生成するマルテンサイトのバリアント方位の関係を調査したところ,10%のオースフォームでは,オーステナイトの優先すべり面を晶癖面とするバリアントが多く生成するのに対して,30%,50%オースフォーム材では,その中でも特定のバリアントが優先生成する.これは,オースフォームによってオーステナイト母相中に優先すべり面に沿ったマイクロバンドが発達し,マイクロバンドに沿ったバリアントの核生成・成長が他のバリアントよりも起こりやすいためと考えられる.
|