研究概要 |
チタン酸バリウム(BaTiO_3)微粒子の表面は粒子内部と異なる構造を持ち,粒子径が小さくなった場合には表面の効果によって誘電率が大きく変化すると考えられる.本研究では強誘電体微粒子における粒子構造に着目し,ペロブスカイト型強誘電体微粒子の粒子構造と誘電特性の関係について明らかにすることを目的とした. 本年度は,粒子構造や誘電率に与える欠陥の効果を調べるために,合成法の異なるBaTiO_3ナノ粒子について誘電率や粒子構造の評価を行なった.固相法,水熱法,シュウ酸塩の2段階熱分解法で合成された粒子径100~500nmのBaTiO_3ナノ粒子について誘電率の測定を行なった結果,特に小粒径の領域において合成法による違いが表れた.誘電率は2段階熱分解法>固相法>水熱法の順で大きかった.この原因を明らかにするために,粒子のX線回折パターンを複合構造モデルで解析し,粒子内の構造を決定した.その結果,全ての粒子が,内部正方晶層(バルク層),格子歪の傾斜層,表面立方晶層の3層構造で構成されることが確かめられた.ただし,構成層の体積割合は合成法によって大きく異なることがわかった.特に,低誘電率層である表面立方晶層は水熱法による粒子が最も厚く,次いで固相法,2段階熱分解法の順になった.また,表面層の厚さは欠陥濃度と関係があり,欠陥濃度が高い試料ほど厚くなることがわかった.水熱法で合成したナノ粒子では,欠陥濃度が高く表面層が厚いために,誘電率が低くなる.一方,2段階熱分解法で合成したナノ粒子は欠陥濃度が極めて低いため,表面層が薄く,誘電率が高いことがわかった.BaTiO_3の誘電率における欠陥濃度の効果は,BaTiO_3の粒子構造によって理解できることが本研究によって明らかとなった.
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