研究概要 |
本研究では高い光吸収特性を示したAl_2O_3-ITO焼結体のAl_2O_3-ITOの体積比を60:40から70:30と50:50にした。焼結体を酸素雰囲気、1500℃で4h焼成すると理論密度の96.3-99.4%に緻密化した。焼結体の電解には導電性、緻密性、強度が必要である。したがって、相対密度95%以上を示した焼結体を使用した。0.10MTiCl_4中で電析した場合、焼結体表面に生成した電析膜は約340, 580, 810μmで、ITOの混合割合が30, 40, 50vol%と増加することで厚くなった。これは導電性のあるITOの増加で焼結体の電気抵抗が減少し、回路に流れる電荷量が増加したためである。電析前後および電析後200℃焼成体のXRD測定結果、結晶相に顕著な変化はなく、出発原料のAl_2O_3, In_2O_3固溶体,SnO_2および焼結中に生成したInAlO_3に基づく回折パターンが観察された。200-800nmの波長に対する焼結体の反射率は約2-15%で、ITOが増加するとピーク位置が420nmから480nmの長波長側にシフトした。一方、電析直後の焼結体は330nm以上の波長に対する反射率が増加し、450-800nmで約45-75%に増加した。これは反射率の高いAl_2O_3膜が焼結体表面に析出したためと考えられる。しかし、200℃焼成後、400-800nmで反射率の最大値は20-60%に減少した。XRD, XPS,ラマン分光測定により、電析後900℃焼成体表面にルチル型TiO_2の析出を確認した。XRD測定により700℃までルチル型TiO_2を検出していない。これらの結果は200℃焼成でアモルファスTiO_2が電析膜表面に生成したことを示唆する。反射率が最も小さかった60vol%Al_2O_3-40vol%ITO焼結体についてTiCl_4濃度を0.01Mから0.15と0.20Mに変更して電析を行った。TiCl_4濃度増加にともなって電析膜厚は570, 690, 880μmと増加した。結晶相に顕著な差は見られなかったが、200℃焼成後の電析膜の反射率の最大値は60-70%に増加した。これは電析膜中のAl_2O_3の割合増加が原因と考えられる。次に、0.1mol/lのTi, In, Sn, Alの塩化物溶液を10V/cmの電場で電析し、ITOガラス基板上へ直接、酸化物の成膜を試みた。その結果、電析前(87nm)に比べてかなり厚い1.3-2.5μmのアモルファスまたはIn_2O_3膜が成膜できることがわかった。
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