本研究の目的は高い熱伝導率や高い電気抵抗を持ち、しかも低い熱膨張係数を示すポリマー複合材料を開発するため、高い熱伝導性と絶縁性を併せ持つ窒化ホウ素(BN)ナノチューブ/ナノシートやAlNナノワイヤよりなるナノサイズのフィラーを作製し、特性を評価することである。 今年度の研究として、BNナノチューブを所定の割合で含むエポキシ系複合材料を作製し、特性評価を行った。租原料のエポキシ樹脂と作製したBNナノチューブ/エポキシ樹脂複合材料の基本的特性を比較するため、主に走査カロリメーター法により両者の密度と比熱容量を求めた。その結果、BNナノチューブを凡そ5wt.%含むエポキシ系複合材料の場合、元のエポキシ樹脂の熱伝導値(0.49 to 0.83W/mK)に対し2倍以上になることを見いだした。またエポキシ樹脂にBNナノチューブを加えることにより、誘電特性をも制御することができることが判明した。さらにBNナノチューブとポリビニルアルコール(PVA)系複合ファイバをエレクトロスピニング法により作製した。この方法によりBNナノチューブは成型方向に配列した。一方フィルムはエレクトロスピニング法により作られた繊維を網目状組織にし、ホットプレスで成型したところ、フィルム内においてBNナノチューブは配列していた。熱伝導測定を試みたところ、BNナノチューブの配列方向に添って、最高値(0.54W/mK)が得られた。この値はNielsenのモデルを用いた推定熱伝導値とよく一致する。 基本的な研究として、よく考えられた測定手法により、BNナノチューブの密度と比熱容量を求めた。BNナノチューブの密度と比熱容量のデータはBNナノチューブ複合材料の物理的特性を予測するために有用である。
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