研究課題
カーボンナノチューブ(CNTs)とセラミックスの複合材料の大きな問題点は、既成のセラミックスとCNTsを混合して複合材を作製するために、母材のセラミックス内のCNTsの不均一分散による「CNT凝集体とセラミックスの界面でのすべり」が生じ、CNTの機械強度が反映されないことである。この問題点を解決するために、それぞれ1本のナノチューブに均一に無機物質を担持させたものを焼結させるという概念を考えた。そこで、(1)1本1本にハイドロキシナノアパタイトを満遍なく担持させるために、フッ素化MWCNTに注目し、(2)ハイドロキシナノアパタイト/MWCNTを焼結するのに、放電プラズマ焼結法(sark plasma sintering ; SPS)に注目した。上記2つの特徴を組み合わせ、本研究では、1本1本のフッ化MWCNT表面にハイドロキシナノアパタイトを核成長させ、放電プラズマ焼結法により、圧力をかけながら熱処理を行うことにより、軽量でナノチューブの曲げ強度が生かされた生体骨に近い「ハイドロキシアパタイト/MWCNT複合体」を作製し、代替生体材料としての機能を探索することを目的とした。21年度はCVD法で合成されたMWCNTをフッ素化し(フッ素化MWCNTs)、そのフッ素化MWCNTsをヒトの細胞外液に近いイオン濃度を持たせた擬似体液(simulated body fluids ; SBF)の中に分散させ、トリス緩衝剤(トリスヒドロキシメチルアミノメタン50mol/m^3と塩酸45mol/m^3)により、37℃、pH7.25付近で10日間攪拌させて、ハイドロキシナノアパタイトをフッ素化MWCNT表面に析出させることを試みた。しかし、SEMおよびTEM観察から、ハイドロキシナノアパタイトはフッ素化MWCNT表面に析出されなかった。一方、カルボキシル化MWCNTsの表面にはハイドロキシナノアパタイトが析出することが判明した。このハイドロキシナノアパタイトの析出の違いは、MWCNT表面の官能基の負電荷の極性の強さが原因と考えられる。電気陰性度の大きいフッ素はSBF内の陽イオンを引きつけることで、SBF中の陽イオン強度が減少し、ハイドロキシアパタイトを析出する条件が揃わなかったと考えられる。
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