本研究では、研究代表者が考案した無機中空ファイバー作製法を応用し、コア-シェル型カーボン-チタニア複合ファイバーの作製について検討している。前年度はポリビニルアルコール(PVA)-チタニア複合ファイバーにヨウ素蒸気を触媒としてPVAの脱水処理を施した後、窒素雰囲気下で熱処理を施すことにより、コア-シェル型カーボン-チタニア複合ファイバーが作製できることを見出した。これを踏まえ、平成23年度は、カーボンコアの炭化度、チタニアシェルの結晶構造両方に影響を与える重要なファクターである炭化温度の影響について検討した。具体的な試料作製手順を以下に示す。エレクトロスピニングによりPVAナノファイバのー不織布を作製し、この不織布をチタンテトライソプロポキシド/エタノール溶液に浸漬することによりPVAファイバー表面をチタニアでコーティングした。この不織布をヨウ素蒸気に暴露しPVAの脱水処理を行った後、窒素中での熱処理により高分子コアのカーボン化とチタニア殻の結晶化を同時に進行させ、カーボンチタニア複合ファイバーを作製した。500~800℃の各炭化温度における試料をXRDにより解析した結果、チタニアシェルの結晶構造は500~700℃ではアナターゼであるのに対し、800℃ではアナターゼに少量のルチルを含む混合相であることがわかった。また、700℃以上でアモルファスカーボンに対応するピークが観察され、コアのカーボン化には700℃以上の熱処理温度が必要であることが示された。ファイバー膜の表面抵抗測定によりファイバーの導電性を評価した結果、熱処理温度の増加に伴い導電性は単調に増大し、500℃から800℃に温度を増加させることで導電性が6桁向上することを確認した。太陽電池や光触媒としての用途を考えた場合、チタニアシェルの結晶構造はアナターゼが望ましい。そのため、熱処理温度は700~800℃が適切であると結論づけられる。
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