低融点材料の構造制御を行う手段として、高重力場の効果とレーザーアブレーション法とを組み合わせたGAPLA法について研究を行った。前年度までの実験の結果より、高融点材料の場合よりも組成傾斜の度合いは小さくなるものの、低融点材料の組成傾斜にもGAPLA法が有効であることや、ターゲット加熱によってアブレーションプルームの発光強度が変化することがわかった。また、ターゲット加熱によってアブレーション閾値(アブレーションが起こるレーザーフルエンスの下限)に影響を与えていると考え、今年度も引き続き実験を行った。ターゲット常温時および加熱時におけるアブレーションプルームの発光観測をいくつかのレーザーフルエンスを用いて行ったが、ターゲット加熱によるアブレーション閾値の変化は確認できなかった。数百度のターゲット加熱によりアブレーション時に放出される粒子量は増加するか、アブレーション閾値は変化しないということである。 さらに、これまでの実験結果をより詳細に分析したところ、GAPLA法で生じる組成傾斜プロセスが拡散によらないことが明らかになった。低融点のAl-Cu合金における組成傾斜の度合いは高融点材料と比較するとかなり小さいことに関して、当初はレーザーによって与えられるエネルギーがAl-Cu合金の融点に対して大きすきるために、熱運動による拡散が重力場による元素移動よりも優勢になっていると予想していたが、GAPLA法による組成傾斜が拡散によらないのであればこの考え方では説明できない。このことから材料の融点と組成傾斜の度合いとの関連はほとんどないと考えられる。しかしながら、低融点材料を対象とした本研究を進める過程で、GAPLA法によって生じる組成傾斜の度合いは各構成元素のアブレーション特性の違いにより決まるという重要な知見を得ることができた。
|