平成22年度は水酸アパタイト(HA)被覆法、常圧焼結法での緻密体の作製および、緻密体中からのヨウ素浸出挙動を検討した。HA被覆法の検討では、従来法に加えてリン酸カルシウム飽和溶液を用いた方法と交互浸漬法によりゼオライトAのHA被覆が可能であることが明らかになった。前者はCaを含有していないゼオライトに対して、後者はHA被覆量の制御が可能なHA被覆法として有用である。異なるリン酸塩種を用いたHA被覆の検討からは、リン酸カリウムおよびリン酸アンモニウム水溶液での処理がゼオライトA表面にHAを均一に被覆でき、高温までヨウ素をゼオライト中へ保持可能であることが判明した。均一なHA被覆およびゼオライト表面のアモルファス化がヨウ素を保持したゼオライト細孔を塞ぐ重要な因子となることが明らかになった。複合体とHAとの卓上型ニュートンプレス機を用いた成形および常圧焼結の検討では成形圧50MPa、焼成温度1200℃の条件で相対密度96.2%のHA焼結体を作製でき、複合体と混合したものにおいても一部のヨウ素を保持したまま緻密焼結体を作製できることが明らかになった。複合緻密体中からのヨウ素浸出挙動の検討では、ゼオライトA単体ではほとんどのヨウ素が水溶液中に浸出したのに対してHA被覆を施したゼオライトAでは0.8%以下の浸出であり、焼成体中のヨウ素を99%以上保持できることが示唆された。 本研究の推進によりゼオライト/HA複合体を用いた一連の放射性ヨウ素固定化システムの開発に関する一定の成果を挙げることができた。当初の目標であったヨウ素保持率5wt%以上、相対密度96%以上の割れのない緻密焼結体の作製、水溶液中でのヨウ素保持率99%以上はそれぞれ達成することができた。ガラス固化に替わる次世代の安全で安心な放射性ヨウ素固定化システムとして十分に期待できる。
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