研究課題
水素体積密度と重量密度が高く、シンプルな水素放出反応が進行するために高密度水素貯蔵材料として注目されているアルミニウム水素化物AlH3について、反応機構の解明と水素放出特性の促進に関する研究を進めた。熱重量示差熱分析から、条件を最適化して合成したα、β、γ-AlH3は9.6±0.2mass%(理論値の95±2%)の水素放出量を示し、α相は吸熱をともなう水素放出反応を150℃付近で開始して直接アルミニウムが生成するが、βおよびγ相は発熱反応を経てから吸熱反応が進行してアルミニウムが生成することがわかった。水素放出反応を抑制している粉末粒子表面のアルミニウム酸化物層(厚さ約5nm)について詳しく調べるため、AlH3およびAlD3の放射光X線回折測定(SPring-8 BL02B2)と高強度中性子回折(J-PARC BL21(NOVA))を実施した。Rietveld解析から、α-AlH3とα-AlD3以外に、非晶質Al203とχ-Al203の生成を示す回折パターンが同定された。これらのアルミニウム酸化物層がAlH3の水素放出反応を抑制し、AlH3とAl203の熱膨張率の差により粒子表面に生じた微細なクラックから水素が放出されることを示唆している。さらに、アルゴンまたはヘリウムに対して水素または窒素雰囲気でミリング処理を行うとミリング中の水素損失が抑制され、AlH3の水素放出反応の開始温度が30℃または50℃程度も低下した。最適な制御を行うためにはミリング処理により改質された表面層を詳しく調べる必要があるが、AlH3の水素放出特性の改善には表面改質が有効であることがわかった。
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