研究概要 |
Fe-23 mass%Ni合金を用い,鉄合金マルテンサイト組織内に存在するサブブロック境界のみおよびブロック境界のみを含む幅10μmの片持ち梁試験片を収束イオンビーム加工により作製した.作製したマイクロサイズ試験片の機械的特性をマイクロサイズ機械試験により評価し,マイクロサイズ機械試験後の組織を観察することにより粒界強化機構を組織学的・結晶学的な観点から調べた.得られた結果は以下の通りである. (1)マイクロサイズ機械試験後の試料を走査型電子顕微鏡により観察し,ブロック境界を挟んで活動したすべり系を同定した.観察されたすべり系はブロック境界面とは無関係であり,またブロック境界を挟んで活動したすべり系はお互いに平行に近く,方位差はほとんどなかった.つまり活動したすべり系の方位差が小さいにもかかわらず,ブロック境界はすべり運動に対して強い障害として働いていることが明らかとなった. (2)電子線後方散乱回折図形を用いてマイクロサイズ機械試験後の試料を結晶学的に解析した結果,すべりがブロック境界を伝播することによって局所的に結晶方位が変化することが明らかとなった.これはブロック境界でのひずみの適合性を満足するために結晶方位回転が生じたためであると考えられる. (3)収束イオンビーム加工とイオンミリングを組み合わせることによってマイクロサイズ機械試験後の試料から透過型電子顕微鏡試料を作製する手法を確立した.透過型電子顕微鏡でマイクロサイズ機械後の組織を観察した結果,変形によってラス幅が大きくなることがわかった.
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