力学的変位を光へ直接変換するメカノルミネッセンス材料(ZnS : Mn、SrAl2O3 : Eu)が新規発光材料として、応力センサー、エネルギー変換の高効率化などが期待される。本課題では、応力発光薄膜を作製し、その成膜プロセス、基板界面の密着性、外力負荷法について調査を行った。ナノオーダー薄膜から応力発光を目視することはできなかったが、重要な知見が得られたので以下にまとめる。 イオンビームスパッタ法では、ターゲット材(ZnS : Mn)での分極を中性化するニュートライザーが必須であった。中性化ビームを用いない場合、ZnSは合成されず、低融点、高蒸気圧である硫黄分子がプラズマ中で分解脱理することが原因と思われる。ターゲット材の分極・導電性はDC・RFスパッタリング法において極めて重要なパラメータで、CVD法、PLD法など電気的中性条件下での成膜がZnS : Mnに必須であると結論される。 UV照射により発光特性を評価した。ZnS : Mnスパッタターゲット、粉末材共に高輝度発光を示すが、500nm~1μ堆積させたZnS薄膜では発光を目視できなかった。これは発光強度が体積に比例する為であり、高感度の検知管、厚膜化など検討の余地が残されている。ZnS : Mn薄膜の成膜性は良好ではない。Si、ガラス基板に堆積した場合、表面全体にクラック・剥離が観察される。Cuをバッファ層としたZnSでは剥離が著しく抑制され、XRD測定の結果からバッファ層による残留応力の緩和が示唆される。微粉末を内包したエポキシサンプルに集中荷重を付加することで、数十サイクルに及び局所的な応力発光が確認され、弾性緩和(塑性)が発光に寄与しているものと思われる。
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