研究概要 |
光学的浮遊帯域溶融法を用いてNb濃度の異なる3種類のTi-Nb-Ta-Zr合金(Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr,Ti-30Nb-10Ta-5Zr,Ti-30Nb-10Ta-5Zr mass%)単結晶を作製した。作製した試料に対して、β相単相からの急冷によって室温にてβ相単相の組織を得た。その後、室温(300K)から200Kまでの冷却過程で、電磁超音波共鳴法により弾性率の温度依存性を測定した。その結果、弾性率の温度依存性はNb濃度に強く依存することが明らかとなった。すべての合金に共通する傾向として、せん断弾性率c',c_<44>およびHill近似によって計算された多結晶のヤング率は冷却過程で低下し、室温付近または室温以下で極小値を示すことが明らかとなった。また、それらの弾性率が極小値を示す温度を示す温度はNb濃度の増加に伴って低下することが明らかとなった。Hill近似を用いた解析により、室温近傍でのせん断弾性率およびc_<44>の低下がTi-Nb-Ta-Zr合金が室温にて低ヤング率を示す原因であることが明らかとなった。透過型電子顕微鏡を用いた室温および低温での組織観察の結果、すべての合金において室温からの冷却過程でマルテンサイト変態が起こることが明らかとなり、マルテンサイト変態開始温度近傍で弾性率が極小値を示すことが明らかとなった。マルテンサイト変態温度はNb濃度に伴って低下するため、Nb濃度が最も低いTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金において室温付近で最も低いヤング率が得られることが見出した。得られた知見は、今後、生体用低ヤング率チタン合金の開発において、重要な合金設計指針を与えるものと考えられる。
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