現状、反射型光学系を用い、摘出後(ex vivo)の加工骨に対して行われる骨中生体アパタイト結晶配向性の解析法の低侵襲化を図るため、骨摘出をともなわない、透過法によるin vivo(生体内)計測法の確立を目指す。その前半としての平成21年度は、ex vivo透過法による配向性解析法の確立を目的とした。 ex vivo透過法の確立のために実施した項目は、(1) 骨の線吸収係数(μ)解析と骨サイズ計測に基づく、動物種・骨部位に依存した最適X線源の選択、(2) 最適X線を用いた正常・疾患・再生骨での配向性評価と、力学機能との相関解析に基づく、本新規手法の妥当性の検討、である。 X線源としてMo-Kα線を用い、骨の厚さを変化させつつ骨の線吸収係数を解析し、これに基づきCu-Kα、Ag-Kαに対する線吸収係数を算出し、厚さの異なる種々の骨に対して最適なX線源を選択した。一例として、ラット頭蓋骨ではMo-Kα線、ラビット頭蓋骨ではMo-もしくはAg-Kα線が適切であると判断した。 最適化されたX線源を用い、正常ラット頭蓋骨ならびにラビット尺骨再生部における生体アパタイト配向性を解析し、以下の新規な知見を得た。(1) ラット頭蓋骨は骨面に沿った二次元的な配向性分布を示し、配向性分布は週齢、部位に強く依存する。(2) 骨成長方向や速度といった骨成長挙動が配向性形成の重要な支配因子である。(3) ラビット尺骨の再生過程にて骨密度、配向性は独立に変化し、それにともない力学機能が変化した。(4) 再生骨の力学機能、特にヤング率や靭性といった材質特性に対する寄与は、骨密度よりも配向性が有意に高かった。 以上より、平成21年度の研究にて、X線源の最適化を終え、さらには透過法を用いた本解析手法の有効性を示した。平成22年度は、本手法をin vivo解析に拡張する。 なお、未発表データを含むため、一部、具体的な記述は差し控えた。
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