本研究では2種類の材料を扱った。まず準安定β型Ti合金Ti-6.8Mo-4.5Fe-1.5Al(mass%)について述べる。我々は平成21年度において、2段階の時効を施すことにより、1段時効では生成しないβ'相の生成を確認した。平成22年度では、2段時効初期の組織観察からβ相の相分解を調べた。その結果、β相中に縞状コントラストが見られ、電子回折図形には基本反射に伴い衛星反射が見られた。縞状コントラストは、母相の転位の存在には影響を受けていなかった。以上のことから母相中にスピノーダル分解による周期的な組成変動が生じていることが示唆された。以上より、2段時効は1段目のω相析出により新たな総変態経路を誘起したと考えられ、本合金の新たな組織制御につながると考えられる。 もう1つはα型Ti合金Ti-48.5at%Alを扱った。平成21年度においてはWidmanstatten組織(W組織)の晶癖面が(1011)_αであることを明らかにした。平成22年度ではW組織の形成過程を考察した。W組織とlamellar組織(L組織)の晶癖面の違いについては原子配列の考察から熱膨張率だけでは説明できないことがわかった。起伏の高さは干渉顕微鏡観察の結果、L組織(約100nm)よりW組織(約30nm)が低かった。これはTEM観察の結果、W組織においてはTi_3Alの組織の幅が狭く、体積分率が低いことと一致する。以上の結果より、W組織の形成を考察した結果、まずαTiからTiAlが(1011)_αに沿って生成し、その後Ti_3Alがせん断的にTiAlに沿って生成し起伏が生じたと考えられる。そのときの温度はTi_3Alの体積分率の低さから、状態図においてTi_3Alの量が少ない共析温度近傍と考えられ、これはW組織がL組織より先に生成したというTEM観察結果と一致する。以上より、組織の微細化につながるW組織の生成機構の基礎的なデータが得られた。
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