研究課題
血管内治療に用いる金属ステントは、体への負担が少なく、即効性および短期的成績は良好だが、留置後の再狭窄が問題となってきた。本プロジェクトでは問題の改善に向け、生体適合性・血液適合性に優れたDiamond-like carbon(DLC)およびフッ素添加DLC(F-DLC)薄膜により、薬剤を含浸させた高分子表面を処理した新規複合表面を創製し、血管内ステントの新しい表面改質技術としての応用を目指す。今年度は以下各点に取り組んだ。すなわち、1)親水性ポリマーに断片化DLCを被覆した表面の血管内皮細胞増殖性評価前年度の実験において、断片化したDLCを薬剤含浸ポリマー表面に被覆する事により、薬剤の徐放スピードを制御できることを示した。この表面の生体適合性評価として、50μm四方の断片化DLCを被覆した親水性ポリマー表面における血管内皮細胞増殖性を調べた。6日間の培養実験の結果、断片化したDLCを被覆する事で、表面への内皮細胞の接着性を向上させることに成功した。本結果により、細胞が接着しにくい親水性ポリマー上において、断片化DLCが細胞接着の足場となることを示唆した。2)プラズマ処理による疑似薬剤含浸ポリマーの徐放特性評価CVD法において、プラズマ中へのポリマー表面の暴露が、薬剤徐放特性に及ぼす基礎的な影響を評価した。原料ガスとしてアルゴン、酸素を選択し、疑似薬剤を含浸したMPC(親水性)、EVA(疎水性)、PU(弱疎水性)をプラズマ中に暴露した。この結果、疎水性表面であるEVAとPUにおいてプラズマへの暴露のみでも徐放特性が変化することを見出した。本成果は、プラズマ技術を応用し新しい薬剤徐放材料を創製するうえで、プラズマ中へのポリマー暴露により、その徐放特性が影響を受けることを示唆した。
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