イオン伝導性材料としてメソポーラス材料の用途を拡大するために、メソポーラスシリカの特異なメソ細孔内に電解質媒体であるイオン液体を充填した無機-有機ハイブリッド構造体の調製に取り組んだ。メソポーラスシリカのもつ特異な微小空間内におけるイオン液体の特性評価を行った。界面活性剤と同様に分子集合体を形成すると報告されている長鎖のイオン液体種を用いて、それらの分子集合体の自己組織化とシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合反応を利用して、メソ構造シリカを調製することでイオン液体種を固定化することを試みた。長鎖イオン液体として1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(C16mimCl)を固定化したメソポーラスシリカを合成した。また、同様に四級アンモニウム塩であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(C16TACl)を固定化したサンプルを調製し、固定化による有機構成成分の特性変化を比較評価した。細孔構造およびシリカ骨格の結合状態に大きな違いは見られなかったが、C16TACに比べてC16mimClはシリカと強く相互作用していることを明らかにした。また、メソ細孔という制限空間にC16mimClを固定化することにより、長鎖イオン液体のイミダゾリウム基同士が強固にπ-π相互作用することが示唆された。シリカ-イオン液体およびイオン液体間におけるイミダゾリウム基を介した強い相互作用は、通常の含浸固定化や短鎖のイオン液体種を用いた場合では見られない特異な特性であることを確認した。
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