研究課題/領域番号 |
21760563
|
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
中井 賢治 岡山理科大学, 工学部, 講師 (70388924)
|
キーワード | 構造・機能材料 / 機械材料・材料力学 / 応力波 / 衝撃押込み硬度 / ホプキンソン棒法 |
研究概要 |
一昨年度開発したホプキンソン棒(直径6mmのマルエージング鋼製の長さ600mmの2本の弾性棒)を利用した押込み硬度試験装置を用いて、鉄鋼(S45C),チタン合金(Ti-6A1-4V),工業用純チタン(CPTi)の衝撃押込み硬度を測定した。また、インストロン試験機を用いて上記材料の静的押込み硬度を求め、それと「衝撃押込み硬度」とを比較することにより、押込み硬度に及ぼす負荷速度の影響を定量的に明らかにした。同時に、上記材料について、現有の標準型ホプキンソン棒法試験装置により衝撃圧縮応力-ひずみ関係を、インストロン試験機により静的圧縮応力-ひずみ関係をそれぞれ決定し、流動応力(塑性域における応力)のひずみ速度依存性(最大約1000/sのオーダ)を調べた。これにより、「流動応力のひずみ速度依存性」と「押込み硬度の負荷速度依存性」の相関関係を調べた。現在までに得ている結果をまとめると、以下のようになる。 1.鉄鋼,チタン合金,工業用純チタンにおいて、衝撃押込み硬度は静的のそれよりも15~30%程度大きくなった。これは、それぞれの材料の圧縮流動応力に及ぼすひずみ速度依存性の傾向(正の速度依存性)と完全に一致する。 2.すべての材料において、衝撃押込み硬度試験によりできた円柱状試験片の表面のくぼみ形状と、静的押込み硬度試験によりできたそれを巨視的に観察した結果、顕著な差は認められないことがわかった。そのため、今後は走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、微視的立場から変形機構に及ぼす負荷速度の影響について考察する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄鋼,チタン合金,工業用純チタンの静的・衝撃押込み硬度を求め、押込み硬度に及ぼす負荷速度の影響について定量的に評価できた。また、それら材料の流動応力のひずみ速度依存性を調べ、流動応力のひずみ速度依存性と押込み硬度の負荷速度依存性の相関関係を明らかにすることができた。さらに、巨視的立場から、上記材料の変形機構に及ぼす負荷速度の影響について考察できた。以上のことから、ほぼ研究の目的を達成できたと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
ホプキンソン棒法を利用した応力波パルス負荷方式による押込み硬度試験装置を用いて、脆性材料(ソーダガラス,セラミックス)の「衝撃押込み硬度」を測定するとともに、「衝撃押込み破壊じん性」を決定することである。また、インストロン試験機を用いてこれら材料の静的押込み硬度を測定し、押込み硬度に及ぼす負荷速度の影響を定量的に明らかにする。さらに、これまで得られた結果では、アルミ合金に関しては押込み硬度に及ぼす負荷速度の影響がほとんどないこと、鉄鋼,チタン合金,工業用純チタンの押込み硬度は正の負荷速度依存性をもつことがわかったため、その考察として、微視的立場から変形機構の違いを調べる。具体的には、衝撃押込み硬度試験による円柱状の試験片表面の「くぼみ」形状と静的押込み硬度試験によるそれを走査型電子顕微鏡により観察して、変形機構に及ぼす負荷速度の影響について調べる。
|