航空機エンジンの低圧タービン翼材料としての応用をめざし、熱力学的平衡相を用いるEQコーティング技術を利用して、高強度耐熱Ti-Al合金の耐酸化コーティング材探索を行った。 γ-TiAl合金としてTi-48Al、K55、Ti-52Al-2Agの3種を試料として選定し、真空溶解炉を用いて鋳造した。これらの合金の耐酸化性を、750℃及び800℃において大気中で調べた。その結果、Ti-52Al-2Agは安定なAl2O3層を表面に形成し、良好な耐酸化性を示した。そこで、Ti-Al-Ag三元系に着目し、コーティングに適した平衡相の探索を行った。800℃ではγ-TiAlとα2-Ti3AlがAg固溶体と三相平衡する領域があることがわかった。そこで、平衡する各相の組成分析を行い、Al濃度の高い相をコーティング材として採用した。その結果、基材Ti-45Al-3.5Agに対してコーティング材Ti-46Al-3Agを用いると、基材とコーティングが熱力学的に平衡することがわかった。800℃、100hの拡散試験後に断面観察を行った結果、界面での合金元素の相互拡散は十分抑制されていることが確認された。 コーティング施工技術の確立を目的として、EQコーティング材BC-1(Ni基合金用)を用いて溶射プロセスの検討を行った。HVOF 溶射及びLPPS溶射を用いてEQコーティングをボンドコートとして施工し、さらに表面にトップコートとして安定化ジルコニアをEB-PVDを用いて施工し、TBCシステムを作製した。1135℃において熱サイクル試験を行った結果、TBC剥離寿命はHVOFコーティングに比べてLPPSコーティングの方が5倍以上長く、優れた密着性を持ったボンドコートを施工することができたことがわかった。
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