研究概要 |
燃料電池開発において、水の存在なしに高イオン伝導度を示す無加湿型電解質膜を開発できれば、高温作動用燃料電池の普及のための大きなブレークスルーとなる。本研究では、有機合成技術により、水分子と類似の共役型水素結合ネットワークでプロトン移動が可能なプロトン伝導モノマーを設計・合成し、放射線グラフト重合により、スルホン酸を有するプロトン供与性モノマーと共グラフト鎖として高耐久性の高分子基材膜に導入した無加湿型電解質膜を作製することを目的とする。平成22年度は、スルホン酸グラフト型電解質膜に対して、プロトン化によりアンモニウム塩型共役塩基として水素結合ネットワーク形成できる1,3-ジアザ型共役塩基を添加することで、スルホ基と塩形成したアンモニウム塩型共役塩基の水素結合ネットワークとプロトン供与体であるスルホン酸が同一グラフト鎖に存在する新規電解質膜を合成し、無加湿下での導電率を評価した。 放射線グラフト重合で作製したグラフト型電解質膜及び市販のフッ素系電解質膜(ナフィオン膜)について、スルホン酸によるプロトン化後に水分子と類似のネットワーク形成が可能な共役ジアザ化合物である、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)と4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を塩形成させることで、膜・塩基複合膜を作製し、無加湿型電解質膜としての性能を評価した。塩形成時の温度、濃度を制御することで、種々の塩形成率の複合膜を得ることができた。塩形成率60%以上で、DBN複合膜がDMAP、DBUよりも高いイオン伝導度を示した。塩形成率92%のDBN複合膜は、無加湿下、120℃においてスルホ基当量以下の塩基添加量としては最も高いイオン伝導度である1.02×10^<-4>S/cmを示した。塩形成する共役ジアザ化合物としてDBN、基材膜としてナフィオン膜を用いた複合膜が、無加湿下でのイオン伝導性向上に有効であることがわかった。
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