研究概要 |
コールドスプレー法は圧縮気体により,数十μmオーダーの金属微粒子を亜音速から超音速レベルにまで加速し,固相状態のまま基材に衝突・堆積させることにより皮膜や厚いスプレーフォーミング(積層体)を形成させる技術である.コールドスプレー法の産業分野での実用化には科学的な根拠に基づく皮膜・基材間の密着強度の保証が必要不可欠である. 本研究によりコールドスプレーで作製した銅積層体では,接触面全体で粒子間の付着が生じているわけではなく,接触面の一部すなわち真の接触部でのみで付着が生じ,この真の接触部が全体の強度を支えていることを明らかにした.また,その破断強度は従来のバルク材の降伏強度以上であるものの脆性的な破壊を起こすが明らかとなった.これらの結果から,コールドスプレーで作製した銅積層体を安全に実機で使用する左めにはこの脆性破壊を克服する事が必要であると考え,熱処理による強度の改善についても検討を行った.その結果,熱処理を行う事で銅積層体に延性を持たせる事が可能であるが,その強度は完全には回復せずバルクよりも低くなる事が明らかとなった.また,融点に近い温度での熱処理を行うと拡散に伴いボイドが発生することが確認された.これは顕微鏡レベルの観察では緻密に見える銅積層体であるが粒子・粒子間では結晶密度の低下しているものと考えられ,この密度低下が銅積層体の熱処理回復性が低くなる理由であると考えられる.この密度低下の理由は完全には明らかとなってはいないが,当初予想していた銅積層体内部に残留する酸化皮膜の存在以外の強度支配因子として今後研究が必要な課題であると言える.
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