研究概要 |
1.反応層の作製 ハイドロキシアパタイト(HAp)およびリン酸四カルシウム(TTCP)を用いたパックセメンテーション処理により、973K以上の処理温度において工業用純チタン(CP Ti)上にHAp相を含む反応層を作製することに成功した。HAp粉末を用いた場合においては、数百nm程度の微細な粉末が付着していた。一方、TTCP粉末を用いた場合においては、HAp相以外にCaTiO_3相が検出され、反応層上には微細HAp粉末を有する数μm程度のポアが観察された。また、CP Ti上に形成された反応層は二層構造を有しており、ポアは上部反応層中に存在していた。このポアの形成機構は、TTCPの分解により生じたCaOとTiの酸化により生じたTiO_2との反応によりCaTiO_3が形成され、このCaTiO_3とHApを包むようにTiの外方拡散により上部反応層が形成され、最終的にこれらの粉末が脱離することで生じたと考えられる。また、水を用いたスラリニにより処理を行うことで、ポアの形成が顕著になったが、これはTTCP粉末と基板との接触面積が増加したためであると考えられる。 2.反応層の生体外評価 反応層と基板との密着力は60MPa程度であった。擬似体液浸漬法による反応層のアパタイト形成能を評価したところ、本法により作製された反応層は、処理無しのCPTiよりも短期間でアパタイトの形成が確認された。また、ヒト骨芽様細胞であるSaOS-2を用いた細胞培養試験の結果、TTCPスラリー処理は処理無し基板よりも高いALP活性を示し、高い骨形成能を有することが示唆された。 3.今後の展開 本年度の研究においては、HApを含む反応層を作製することができたが、Tiの外方拡散により生じたTiO_2に包まれているものであった。今後は、反応層中へCa,Pの拡散を利用した傾斜膜の作製を試みる。
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