研究概要 |
本研究では,高温加圧加工法による共有結合性単結晶の高温塑性変形機構を材料学的・応力解析的見地から解明し,さまざまな可能性を秘めた革新的X線集光・分光ミラーへの応用を試みることを目的として研究を進め,平成21年度は以下の成果を得た. 大変形Johansson型点集光結晶の作製および光学特性の実証: 加工後の結晶表面の問題がこれまでの研究から解決されてきたことにより,X線点集光素子の開発を前倒しして進めた.Ge(333)回折光を点集光させるため,加工後の結晶表面が球面(曲率半径:R),かつ,その結晶の内部においては結晶格子面の曲率半径がJohansson型集光方向に対しては2R,それとは垂直な方向である点集光方向においてはRとなる結晶への加工を試みた.本研究ではR=300mmとし,通常の弾性変形を用いた手法では極めて困難な大変形である.これを実現するために,高温加圧加工前の板厚0.75mmのGe(111)ウエハをR=600mmで凹円筒状に研磨し,それをR=300mm凸球面に沿うような形で高温加圧加工を行った.温度および加工速度・印加荷重を変化させ,最適条件を導いた結果,表面に局所変形等を示さない点集光素子を得ることに成功した.得られた素子についてX線による格子面曲率評価および点集光評価を行ったところ,(i)結晶内部での格子面曲率比が設計どおりの1:2となっていること,(ii)結晶位置でφ16mmの回折ビームが焦点位置では半値幅で0.4mm,すなわち面積比で1/1000以下にまで集光できること等が実証された.本成果により,本素子を回折集光結晶として用いることで,実験室レベルの装置でも,出力を上げることなく強力なX線を得ることが可能となり,X線使用効率を飛躍的にあげることが可能となる.
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