研究概要 |
近年,産業界では自動車部品の軽量化に伴い,車両重量の1/3を占める車体部品に比強度の大きな高張力鋼板の利用が拡大している.600MPa級までの鋼板は比較的延性に富むため実用されているが,800MPa以上の鋼板や1000MPa以上の超高張力鋼板では延性が非常に低くなり,割れが生じて産業界では問題となっている. 一般的に車体部品は生産コストの低いプレス成形により得られている.車体部品は板材を絞り,せん断にされ,板材の端をフランジ曲げされて成形される.曲げ条件により曲げ端部が伸ばされる伸びフランジとなり,引張応力によりフランジ割れが発生する.端部縁はせん断された切口面となっているために切削による切口面よりも延性が半減して割れが生じ易く,延性の低減量はせん断加工条件によって影響される. 伸びフランジ性は一般的に穴拡げ試験により評価され,高張力鋼板の伸びフランジ性に関しては,鋼種による影響,せん断クリアランスの影響,切口面周囲の引張応力の勾配の影響の調査が行われている.また,向上法には,コイニング,シェービング,穴周囲の焼鈍による方法が報告されているが,超高張力鋼板に有効化は明確でない. 一方では,伸びフランジ部の引張応力の低減により割れを防止できる.一般的には,引張応力を緩和するために伸びフランジ部の曲率半径の増加や製品の曲げ長さの減少により対応している.しかし,製品形状が大きく変わってしまうために利用が難しいことが多い. 延性が非常に低い超高張力鋼板のプレス成形性を向上するために,切口面高品質化と局部応力緩和を行なった.超高張力鋼板の伸びフランジ性の評価法を行うために,穴拡げ試験を行った.また,製品形状をほぼ同じになるような金型に傾斜をつけて引張応力を緩和して割れを防止する傾斜パンチによる伸びフランジ成形を導入して超高張力鋼板のプレス成形性を向上させた.
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