研究概要 |
本研究は界面ナノ構造解析と局部特性評価に基づいた高信頼性アルミニウム/鋼異材接合プロセスを構築することを目的としている.2010年度では昨年度の成果で得られた界面組織制御指針を基に,その自動車車体接合への適用を検討した.まず,接合部の個々の領域での強度特性を把握することが可能な微小領域強度試験機を独自に作製した.この試験では,平行部がミリメートルサイズ,その垂直方向がマイクロメートルサイズの試験片の引張強度が評価可能である.また,その変形挙動の動的なその場観察も可能にした.実用的なアルミニウム合金/鋼異種金属の固相内接合の各領域において,接合箇所により接合強度が大きく異なることが認められた.さらに微小領域での引張試験により,アルミニウム合金内部で母材破断を呈すほど強固な接合界面を有する領域があることがわかった.これら強度変化は接合界面組織に大きく依存し,すなわち,界面部に撹搾作用が加わった非常に薄い非晶質が形成することに起因していることが明らかとなった.また,溶融・凝固過程を含む実用的接合法については,インサート材のめっき組成を最適化することで,低温,低エネルギーの接合が可能であることが実験的に示された.そのような接合材では接合外周部のアルミニウム合金母材部において曲げ変形が生じることがその場観察にて認められ,信頼性の高い接合部が得られることが明らかとなった.以上のことから,接合部の各部位の個々の強度特性を評価する手法は,高信頼性化組織制御のための接合プロセスの構築に非常に有用であることが示された.
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