近年、トラックのハブの破損により車輪が脱落し母子が死亡した事故、遊園地のジェットコースターにおける車軸損傷による乗客死亡事故など、日常生活における安全・安心が脅かされるような重大事故が発生している。このような重大事故の発生を未然に防ぐため、欠陥(破損、損傷)を高精度に探傷・評価する技術を確立することは、我が国はもとより世界的にも緊急の課題となっている。非破壊検査手法の一つである磁粉探傷試験は、微小な欠陥をも検出することができるため、現在多種多様な実現場において広く採用されている。本研究では、磁粉探傷試験で得られた探傷結果から、欠陥形状を正確にサイジング(欠陥形状の三次元的な推定)する手法の開発を行う。これにより、欠陥の危険度を判定し、重大事故の発生を未然に防ぐことのできる次世代の高精度磁粉探傷試験システムの確立を目的として研究を実施する。以下に平成21年度において実施した内容を示す。 1) 磁粉模様から磁粉量を評価するシステムを構築するため、画像処理手法およびデータ処理手法について調査を行った。 2) 鋼材に人工欠陥(き裂)を設ける手法に関して調査を行った。次年度にこれに基づき試験体を作製する。 3) 磁粉の付着していく過程を計測するための、高速度カメラを用いた画像計測システムの構築を検討した。また、プリズムレンズを用いた側面観測用レンズアダプターについても検討を行った。 4) 数値解析のパラメータとして使用するため、磁化器、被検査鋼材の各種材料特性(導電率、透磁率)を調査した。 5) 欠陥形状をパラメータにした数値解析モデルを構築し、欠陥形状と漏洩磁束密度の分布について明らかにした。
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