研究概要 |
アルミニウム合金表面に亀裂および剥離が生じない厚膜の窒化アルミニウム層の形成を可能とする省エネルギー・低コストプロセスの革新的な窒化プロセスを開発するとともに,アルミニウム合金の窒化メカニズムおよび窒化アルミニウム成長速度に及ぼす合金元素の影響について明らかにすることを目的とする.平成21年度は,機械的研磨作用と化学的作用が同時に行われるマグネシウム粉末を利用したガス窒化装置を構築するとともに,窒化物形成に及ぼす諸因子の影響について検討した.アルミニウム-シリコン合金,アルミニウムーマグネシウム合金,アルミニウムー銅合金の各粉末を用いて窒化物の形成に及ぼす合金元素の影響について検討した結果,アルミニウム中に含まれる銅元素は窒化物の成長を抑制し,マグネシウム元素が窒化物の成長を促進させる.シリコン元素は窒化物の成長を抑制するが,マグネシウム元素によるシリコンの化合物化により,窒化物の形成が可能となる.また,アルミニウム-50mass%マグネシウム粉末,マグネシウム粉末,マグネシウム切屑を用いて窒化物形成に及ぼすマグネシウム粉末種の影響を検討した結果,窒化物の成長速度はマグネシウム切屑を用いたときに最も成長が遅く,アルミニウム-50mass%マグネシウム粉末を用いたときに最も成長が速い.マグネシウム粉末,マグネシウム切屑に対して,アルミニウム-50mass%マグネシウム粉末は窒化処理中に溶融するとともに溶融後に発熱反応が生じ,窒化物の成長が最も速くなるものと推定される.さらに,窒化物の成長はアルミニウム中に含まれる合金元素に影響を受けるのみでなく,結晶組織にも大きく影響を受けることを明らかにした。
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