社会でその利用を終えて廃棄される木材は、逼迫する処分場の延命化、エネルギー有効利用、二酸化炭素排出削減などの観点から効率的に処理される必要がある。廃木材の燃焼に伴って排出される二酸化炭素は地球温暖化に寄与しないため、廃木材の燃焼によるエネルギー利用は地球環境保全の観点から有用な手段と考えられる。 廃棄木質系バイオマスの大部分はクロム・銅・ひ素化合物系(CCA)防腐剤で処理されている。日本で社会に蓄積しているCCA処理廃木材は約30万立方メートルにのぼると推計され、今後数十年間にわたって大量に排出されることが予想されている。しかしながら、CCAを含む木材の処理手法、活用手法は確立されていないのが現状である。本研究ではCCA処理廃木材を有効活用するための一手法としてCCA重金属を外部に排出せずにエネルギー源としてガス化できる安全なガス化プロセスの開発を目的としている。 本年度はCCA処理木材をガス化した場合の残渣中に残存する銅、クロム、ひ素の化学種を同定した。CCA処理木材を873~1673K、酸素分圧0.21~0.40atm、ガス流量200ml/minの各条件でガス化し、残渣を回収後、粉末XRD測定に供した。銅およびクロムは主に1273K以下ではCuCr2O4、1473K以上でCuCrO2の形態で存在しており、クロムは3価で存在するのに対して、銅は1273K以下では2価、1473K以上では1価で存在することが明らかになった。一方で、ひ素は主にひ酸銅Cu3(AsO4)2の形態で含まれ、ほぼすべてのひ素が5価で存在するものの、1473K以上でひ酸銅の存在は確認されなかった。これは昨年度の研究結果よりひ素がガス側に揮発したためと考えられ、環境汚染を防止しつつCCA処理木材を活用するためには低温でのガス化が重要であることが明らかとなった。
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