研究概要 |
平成22年3月終了時点で,アルギン酸カルシウム粒子をコアとし,キトサンをシェルとしたコアシェル型ミクロスフィアを調製し,その後コアを溶出するという手法により,粒径が数ミクロン程度の中空構造を有するキトサンマイクロカプセルが合成されることを示したが,同時に,特定の実験条件で合成したところ,粒径が100nm程度の中空キトサンナノカプセルが合成されることを明らかにした.さらに詳細な検討をするため,種々の実験条件を系統的に変化させながら合成を行ったところ,コアとなるアルギン酸カルシウム粒子の原料であるアルギン酸ナトリウムを事前に加水分解により低分子量化し,さらに物理的な弱い静電相互作用によりキトサンを架橋したときのみ,100nm程度の中空ナノカプセルを得ることができることが明らかとなった.この粒径収縮メカニズムを詳細に追跡したところ,加水分解したアルギン酸ナトリウムを用いると,アルギン酸カルシウム粒子のBET表面積が増加し,これは粒子が多孔構造を有するためであることが分かった.この高い表面積のためアルギン酸溶出のための反応面積が大きくなり,これによりアルギン酸溶出速度が速くなることが明らかとなった.これに加えて,物理的な弱いキトサン架橋を利用しているため,キトサンの粒径も自在に変化し,アルギン酸溶出のためキトサンは固定足場を失い,粒径が急激に収縮する,ということが分かった.また加水分解したアルギン酸ナトリウムを原料としたアルギン酸カルシウム粒子が多孔構造を有するのは,加水分解により生じたマンヌロン酸リッチな分解物が開孔剤として作用する可能性が高いことが強く示唆された.
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