研究概要 |
サスペンジョンとの対比を明確にするため,エマルション系として水中に合成樹脂が分散した水系樹脂塗料を対象として検討することにした.サブミクロンの分散樹脂粒子の動きはリング状照明ユニットを利用することで観察できたが,剪断場での直接観察は困難であった.そこで,本年度は恒温・恒湿空気供給装置を導入し,乾燥挙動解析手法の確立を行った.高分子水溶液・シリカ粒子サスペンジョンを対象として乾燥挙動を解析した結果,分散粒子が液面に出現する時刻および充填された粒子が固定化される時刻をレーザー変位計によって検出し,乾燥過程における粒子充填プロセスを定量的に評価することができた.この結果,粒子が凝集しているもしくは粒子の沈降速度が比較的遅い場合には,高分子と粒子が均一に分布した膜が形成されることが示唆された.樹脂エマルション塗料を対象として同様の検討を行ったが,分散粒子によるレーザー光線の散乱がないために表面状態を適切に検出することはできなかった.今後は反射光強度による検出方法を検討する予定である.しかしながら,エマルションの膜厚変化挙動はサスペンジョンと大きく異なっており,さらに固形分濃度によって乾燥挙動が大きく異なった.そして,固形分濃度が低い場合には,内部に十分溶媒が存在していても表面からの乾燥速度が抑制されることがわかった.乾燥過程を直接観察したところ,粒子濃度が低い場合には移流集積された分散粒子が乾燥界面で充填層を形成し,表面からの乾燥を抑制することが示唆された.
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