非溶媒誘起相分離法による高分子の固化過程を解析するため、光散乱測定ならびに目視による白濁点測定を行った。白濁までの時間を測定することで、浸漬してから相分離開始までの時間が読み取れる。また光散乱測定により、結晶化によって構造が固定化する最終的な固化時間が測定できる。高分子溶液を浸漬・固化させる非溶媒相(水)に溶媒を添加することにより、相分離過程が瞬間型相分離から遅延型相分離に変化させることで、固化過程の解析を行った。固化の際、凝固槽の溶媒量を増加させるほど固化完了時間は短くなり、膜強度は凝固槽中のDMAcが30wt%のときに極大値を取った。瞬間型相分離では膜表面に緻密層が形成され、それ以降の物質移動ならびに相分離を阻害するとともに内部に孔の大きなマクロボイドを形成する。遅延型相分離となることで緻密層が形成されず、膜全体として見たときの相分離完了時間が短くなったものと考えられる。また、DMAc濃度が増加するとマクロボイドが形成されないことにより膜強度が増加し、さらにDMAcを添加すると相分離が完全に進行しないため膜強度が低下した。 膜強度の発現をin situで測定することを目指し、板ばねに針を固定した強度測定装置を用いて膜の強度測定を行った。膜を載せたステージが一定速度で移動して試料に針が刺さることにより、応力が板ばねの変位として測定できる。この結果から、板ばねの変位の微分値が膜の強度と相関するものとして得られる。本年度は瞬間型相分離、遅延型相分離でそれぞれ固化の終了した膜を測定した。その結果、瞬間型相分離では均一な強度が発現しており、遅延型相分離ではマクロボイドに起因する強度の低い構造が存在することを定量的に明らかにした。
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